タクシーにムカついた時どうするか。(3)

近くても大丈夫?

相談

私は高齢で、歩くのがしんどいので、すぐ近くに行くにもタクシーを利用します。でも運転手さんにとって近距離は嫌なのでしょうね。道で手を挙げ、乗車し、「近くてすみませんが・・」と言って行き先を告げると、ほとんどの運転手さんはあまりいい顔をされません。気持ちはわからなくはないのですが、そんなことが続くと、タクシーに乗るのが億劫になってしまいます。タクシーがなければ外出できないし、ほんとに困っています。

回答

「近くて、すみませんが、・・・までお願いします」。近距離利用の場合、よく私たちが使うフレーズですね。長時間客待ちしていて、ようやく実車になったと思ったら、初乗り料金のお客様だったとしたら、それはため息の一つや二つ出るのも想像に難くありません。その気持ちがわかるから、「近くてすみませんが、・・・」と前置きするのです。まあ、言わない人も結構いるかもしれませんが。

これは私のかなり昔のエピソードなんですが、深夜、六本木のタクシー乗り場から芝浦まで行ってもらった時のこと。東京の人なら分かると思いますが、六本木から芝浦って、近いんですね。それで、行き先を告げる前に言ったんです「近くて、すみませんが、・・・」と。そしたら乗務員さん、最初は無言でしたが、しばらく走った後、堰を切ったように語り始めたんです。「お客さんが近くて悪いと言ったから言うけど」の言葉を皮切りに、自分がいったい何時間客待ちしていたか、近くて悪いと思うのに、なぜ乗ってきたのか、繰り返し繰り返し何度も何度も怒りの声が飛んできました。かなり溜まっていたのでしょうね。その日の営業成績がよっぽど悪かったのでしょう。哀れに思えた私は、彼の話をじっと聞いていました。「近くて悪いと思うのに、なぜ乗ってきたのか?」と問われても、困りますよね。こんな乗務員さんに遭遇すると、近距離利用が怖くなります。

知り合いのタクシー乗務員Aさんに、どうしたら気軽に近距離利用ができるか聞いてみました。以下Aさんの話です。

たしかに昔は近距離利用客をゴミなどと呼んで嫌厭していた乗務員が多かったが、今は事情がすっかり変わり、タクシー業界は近距離利用客大歓迎のトレンドに。各タクシー会社は乗務社員に近距離利用客を大切にすることを徹底的に教育しているし、2017年東京で始まった初乗り料金の改定もそうした取り組みのひとつ。(初乗り2km730円から約1km410円へ)。だから、中には昔気質の乗務員がまだいるかもしれないが、ほとんどの乗務員は、近距離利用でも嫌な顔ひとつしないはず。遠慮しないで、気軽に堂々と利用してください。それでもまだ不安な場合には、初心者ドライバーというステッカーをつけたタクシーを選んで利用するのがおすすめ。(ただし、残念ながらまだ一部の大手タクシー会社にしかありませんが)。タクシーの仕事を始めたばかりの乗務員は1回1回の仕事をこなすのに精一杯なので、お乗せしたお客様の料金のことなど頭になく、乗ってくれただけで有難く感じ、すぐ近くまででも喜んで走ってくれますよ、とのことでした。これからは、気軽に近距離利用をしてください。

なお、今回の「近くて、すみませんが、・・・」は気にする必要がない一方で、逆に気をつけたい言葉があります。それが「急いでください」です。

時間に余裕があるから、のんびりタクシーで行こう。なんて、あまり聞いた事ありません。時間がなくて、急いでいるからタクシーに乗るというケースが多いと思います。そんな時は乗車して行き先を告げた後、「急いでください」とつい口に出してしまう方、多いのではないでしょうか。「1日に少なくても1〜2回はそんなお客様をお乗せします」と話すのは、知り合いのタクシー乗務員Aさん。しかしこのリクエスト、Aさんに言わせれば、まったく意味がないそうです。つまり「急いで」と頼まれ、言われたまま素直にスピードを出して走るお人好しの乗務員は、まずいないとのこと。もしスピード違反で捕まったら、責任は100%乗務員のせいになる。法人タクシーだって、会社は一切責任をとらない。「お客様に頼まれたから」なんて言い訳、通用するわけない。だから乗務員は、自分を守るために、急がない。Aさんは、会社の安全研修のたびに耳タコで言われたそうだ。「お客様を電車や飛行機の出発時刻に間に合うように送るのが乗務員の仕事ではない!」と。とは言っても、タクシーの中は乗務員と乗客のみの密室空間。「急いで」と頼まれ、「いやそれはできない。なぜなら・・・」と正論で断ることなど、サービス業である以上、なかなか出来ない。そこで乗務員さんたちは、急ぐ”ふり”して誤魔化すのだそうです。「急いで」の指示に適当に返事して(ちなみにAさんは「ガンバリます」と返事をしていたらしい)最初だけアクセルを思い切り踏み込みGをかける。そうすると後部座席に座る業客は、その後フツーのスピードで走っていても、「この運転手さんは急いでくれている」と思うのだという。なるほど、さすがプロ。もちろん、乗務員も人の子。高圧的に「急げ。間に合わなかったらお前のせいだぞ」と上から言ってくる乗客に対しては、こんなテクニックで流すけど、丁寧にお願いされたら、違反しない範囲で、あるいは抜け道走行を駆使して、何とかしようと努力してくれる乗務員も多いので、絶対ダメだと思わずに相談してみるといいとのこと。

なんらかの不可抗力で予定が遅れ、時間を守る頼みの綱はタクシーしかないという切羽詰まった時に、あせりから高圧的になる気持ちは分からなくはないけど、そんな時でも落ち着いて丁寧に振る舞ったほうが、結果的には早く目的地に着けるようなので、教訓にしてください。