エレベーターは最後に降りなさい。
タイトルを見て、バカにするなと反応した君は正しい。なぜ今さら、この歳になって、そんな基本的な社会常識を諭されなければならないのか? 一流のコピーライターとそれに、何の因果関係があるのか? 君の苛立ちはもっともだ。しかしこのことは早い段階で、つまり君がコピーライターの暗黒面に落ちてしまう前にどうしても伝えておかなければならない最重要事項だから、非難を覚悟であえて語ることにした。電通や博報堂の新人研修でも決して取り上げないテーマだろうから、めったに聞けない話だと思って耳を傾けてほしい。
一流は決して偉ぶらない
いろいろなコピーライターを見てきたが、晴れてコピーライターとして採用された途端に勘違いがはじまる人が少なからずいる。自分の感性は人一倍鋭く、想像力に優れ、言葉の響きに敏感な才能あふれるクリエーターだ。ワタシは特別な存在。一般の人と一緒に扱わないでほしい、とかなんとか。自信をもつのは悪くない。自分を特別な存在だと思うのは自由だ。コピーライターという職業には、そう思わせるだけのフォースがあるのだろう。それとも、ゲッペルスの亡霊に洗脳されているのだろうか? どちらにしても、自分を特権階級だと思ってしまった時点で、一流のコピーライターへの道は永遠に閉ざされる。一流は決して偉ぶらない。つけあがらない。他人を舐めない、嗤わない、馬鹿にしない。力の有る者にも無き者にも等しく敬意をもって接するが、しかし力の有る者に媚びることなく、無き者からの賞賛を求めない。そうは言っても、ヒトはそれほど強くない。アナキン・スカイウォーカーがダースベイダーになってしまったように、暗黒面の口はどんなコピーライターの前にも常に開かれている。
エレベーターは最後に降りなさい
そこで、日常生活において、一連の修行が必要になる。エレベーターに搭乗したら、最後の人が降り終わるまで開ボタンを押し続け、君は最後に降りなさい。電車・バスの中では、どんなに疲れていても、すすんで席を譲りなさい。駅前でチラシを配っている人がいたら、丁寧に受け取り、笑顔で「ご苦労さま」と声をかけなさい。コンビニで支払いをしたら、君から「ありがとう」を言いなさい。横断歩道を渡るとき、君は青信号だから当然といった態度でゆっくり歩いていないだろうか。足が健常ならば、左折車右折車のために小走りで渡りなさい。車を運転しているとき、反対車線で右折のウインカーを出している車を見たら、パッシングをして行かせてあげなさい。
コピーライターの筋トレ
他人に譲る。自分を後回しにする。ありふれたマナーの一部にすぎない。ここにラインナップした行為は自分を虚しくして自己顕示欲を防ぐ効果がある一方、他人の気持ちに人一倍敏感にならなくてはならないコピーライターの資質を鍛えるための筋トレでもあることを、強調しておこう。
心遣いがどのくらいあるかを仲畑さんは重視した
先に、今回の話は大手広告代理店では触れない内容だと書いた。しかし、個人事務所では話は違う。たとえば仲畑広告制作所。コピーライター志望者に、机の上を拭くように命じる。そのとき、机の上だけではなく、机の下にある引き出しまで拭く人を仲畑貴志氏は採用したという。心遣い、心配りがどのくらいあるかを仲畑さんは重視した。一流のコピーライターは、他人に対する優しい眼差しから生まれる。ゆめゆめ忘れてはならない。
今日は、ここまで。