プログラム02

『コピー・カプセル』を読みなさい。

世の中の多くの人はコピーライターという職業を知らない。コピーライターを選んだ君には意外な話かもしれないが、コピーライターが一躍有名になった1980年代の日本でさえ、コピーライターが何をする人なのか、正確に理解している人はほとんどいなかった。まして今日、コピーライターの代名詞だった糸井重里氏の引退と呼応するように、社会からコピーライターという存在は完全に消えた。もともと裏方的存在なので、知られなくなったのは元の鞘に戻っただけのことである。が、不便を感じることも稀にある。たとえばタクシーで移動中、税務署で確定申告をしている時、歯医者さんで歯石を落としてもらっている時、職業を尋ねられる。コピーライターだと答える。怪訝な顔をされ、それはどんな仕事なのですか? と説明を求められる。運転手さんや衛生士さんには、チンドン屋みたいなもんです、と適当に答えることもできようが(失礼!)、税理士さんにはそうはいかない。さて、君ならどう説明する?

コピーライターという職業

一般の人にコピーライターの仕事をとても分かりやすく説明できる事例を、ひとつ紹介しよう。以下、『コピー・カプセル』(ハル・ステビンズ著)より引用。

〜あるクリーニング屋が「服の洗濯1ドル、防虫処理無料」と広告した。その後このコピーを「服の防虫処理代1ドル、洗濯無料」に変えた。結果は、ビジネスが20パーセントふえた〜

コピーライターの仕事の本質は、この僅か70文字の中にある。

『コピー・カプセル』を手に入れよ

そろそろ、今日の本題に入ろうか。君は広告に関する書籍を、既に何冊も、何冊も読んできた。日本の、そして世界の、一世を風靡したクリエーター。広告評論家。大学教授。広告代理店経営者。メディア。編集者。文化人。誰が書いたものでも、とにかく広告について書かれたものなら、硬いものから軟らかいものまで手当たり次第に、貪欲に吸収してきた。その君の膨大な読書遍歴のなかに、『コピー・カプセル』は含まれているだろうか? もしまだないのなら、今すぐ発注しなければならない。Amazonのマ−ケットプレイスでは、2017年12月現在、中古品が17点出品されている。電子書籍にはまだなっていないようだ。

「人間を根底から作り変える書物はめったにない」

入手したら、冒頭の序文から巻末の訳者あとがきまで、一気読みしなさい。いやいや。広告に興味を持つ君なら、そんなこと言われなくても、いちど読み始めたら止まらなくなることを、自信を持って断言しよう。一流のコピーライターが備えていなければならない哲学、精神、意識、技術のすべてが綺羅星のごとく散りばめられている。1957年(つまり半世紀以上も前)に刊行された書籍だが、恐ろしいほどまったく古びていない。君はすべてのページにドッグイヤーをつくるだろう。一生のうちにそうはない、稀有で幸福な読書体験をするだろう。評論家の故・福田恆存氏はかつて、「人間を根底から作り変える書物はめったにない」と語った。福田氏にとってのそれはD.H.ロレンスの『アポカリプス論』だったという。同じような出会いが、君にも訪れる。『コピー・カプセル』はコピーライターでない君からコピーライターの君へ、根底から作り変える。君は一流のコピーライターへ、また一歩前進する。

この章のしめくくりに、一流への道を歩みはじめた君へ、『コピー・カプセル』から至極の名言を、もう一編だけ贈ろう。

〜コピーライターの製粉機にとっては、すべてのものが穀物である。見るもの、聞くもの、読むもの、感じるもの、起こるもの、起こらないものすべてが。〜

今日は、ここまで。

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