プログラム01

一晩にヘッドラインを500本つくりなさい。

仲畑貴志氏の、著名な新人コピーライター育成法である。革新的な方法を期待していた君は、いきなり古典的ともいえる方法が登場したことに失望しただろうか? 焦らずに話を聞いてほしい。

プロへの扉を開く千本ノック

このトレーニングを最初に紹介するのは、相応の理由がある。新人に膨大な量のコピーライティングを強いる方法論は、もちろん仲畑広告制作所独自のメソッドではなく、オーソドックスな手法として昔からあった。宣伝会議などが主催する講座やワークショップも、とにかく大量に書かせるから覚悟しろ!的なクラスが、今でも多い。コピーライターになるうえで、誰でも一度は通る千本ノックではある。フラフラになり、頭が真っ白になりながら広告コピーを考える経験をして初めて、プロの扉は開かれる。だからこの課題を最初に持ってきた。いわば踏み絵だ。

コピーライターのライバルは人工知能になる

一晩にヘッドラインを500本つくりなさいと聞いたとき、君は何を思った? 私には、君のため息と心の声が聞こえくる。無理。面倒。うざい。古臭い。意味ない。効果あるの?嗤わせないでほしい。そういう君はスタートラインにさえ立てない。遅かれ早かれ、コピーライターのライバルは人工知能(AI)になる。彼らは、一瞬でこの千倍万倍のヘッドラインをつくり、その中からベストワンの最適解をコンマ1秒以内に選び出す。そんな存在を相手に、同じ土俵で戦う気概が少しでもあるのなら、一晩にヘッドラインを500本つくる程度の作業は、避けてはならない。

無意識が目を覚ます瞬間

500本というが、騒ぐほどのことではない。少なくとも、コピーライターとして仕事をしている君は、毎晩、100本くらいの量は考えているはずだ。ちなみに、昨晩、君が書いたコピーの下書き(殴り書き)をゴミ箱から取り出し、意味不明の落書きも含め数を数えてごらん。思いのほか書いていることに驚くに違いない。あとは意を決して、その5倍やればいい。それだけだ。なんてことはないだろう。お盆休みだろうが正月休みだろうが。ハッピーマンデーだろうがプレミアムフライデーだろうが。考えて考えて考えて、考えられなくなるまで考えて、書きつづける。そのうち、君の脳味噌は限界に達する。意識が朦朧としてくる。変性意識に陥る。と、その時。思いもよらない言葉が、ふと、どこからか降りてくる。無意識が目を覚ました瞬間だ。コピーに限らず、スポーツでも音楽でも、すべての分野に共通することだが、膨大な量をこなす特訓は、潜在意識の活性化を目的とする。潜在意識とつなげることが、一晩500本の狙いに他ならない。おめでとう。君は一流のコピーライターへの第一歩を踏み出した。

特訓はまだ続く

さて、君の側に仲畑さんがいれば、500本つくった時点でこの課題は終了となる。あとは仲畑さんに提出して、アドバイスを受ければいい。しかし残念ながら、仲畑さんも仲畑さんのような師匠もいないとなれば、特訓はまだ続く。書きっぱなしではいけない。自作のコピーを、今度は自己評価しなければならない。

言うまでもないが、コピーは、印刷媒体ならデザインに落とし込む、電波媒体なら音にしてみる。そうしてみないと、届くか届かないかの査定が厳密にできない。ここでは、印刷媒体用のコピーに絞って話をすすめる。

つくりたての500本の中から、ベスト10を選ぶ。それを、仕上がりをイメージしたフォントでWordに打ち込む。(同僚のデザイナーに頼んでラフに流し込んでもらえれば、なお良)プリントアウトする。壁に貼る。どのコピーが受け手に届くか採点する。ここまでしてようやく、君はこの課題を達成したことになる。君の出した評価が正しいか正しくないか、この時点ではまだ気にしなくていい。「コピーは書くものではない。選ぶものだ」仲畑貴志氏の言葉だ。憶えておこう。

ボディーコピーの練習方法

今日は初回なのでは時間を少し延長して、ボディーコピーの練習方法も併せて紹介しておこうか。これは、バブルの頃、ある広告代理店で実際に行われていた方法である。ボディーコピーを書き終えたら、上司に原稿を回す。程なく上司の赤字が返ってくる。商品名と企業名以外のすべてのコピーに横線が入れられている。なぜその部分がダメかの説明は一切ない。仕方なく、まったく違うコピーを作り直し、上司に回す。程なく上司の赤字が返ってくる。商品名と企業名以外のすべてのコピーに横線が入れられている。なぜその部分がダメかの説明は一切ない。仕方なく、まったく違うコピーを作り直し、上司に回す。程なく上司の赤字が返ってくる。商品名と企業名以外のすべてのコピーに横線が入れられている。なぜその部分がダメかの説明は一切ない。延々とこれが繰り返される。

今の君は、コピーライティングを教えてくれる師匠がいなかったね。だから君は独りでこの練習をしなくてはならない。君と君の指導者と、一人二役を演じる。君が書いたコピーを、君が添削する。商品名と企業名以外のすべてのコピーに横線を入れる。1日おく。その赤字をもとに、まったく違うコピーを作り直し、君が添削する。商品名と企業名以外のすべてのコピーに横線を入れる。延々とこの作業をつづける。

これで初回のプログラムは、終了する。こんなプログラムがあと18回つづく。ここで辞めるか、2つ目のプログラムに進むか。よく考えて判断してほしい。

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